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純文学おすすめ3選。文豪からの時代を超えたメッセージ

こんにちは、Michelです。

寒い冬、家で過ごす時間も増えたのではないでしょうか。

私は寒い冬に温かい家で美味しい紅茶を飲みながら読書をすることが大好きです。

割と明治~昭和初期の文学が好きでよく読むのですが、心に響く言葉というのは時代を経ても変わらないのだな、とよく感じます。


今日は自称読書家の私が紹介するおすすめの日本純文学を紹介しようと思います。
普段あまり小説を読まない人・一昔前の日本文学をあまり読んだことがない人でも読みやすい3冊です。
本のタイトルだけですと、どこかで聞いたことのある本ばかりだと思いますので手に取りやすいかと思います。

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まず、純文学とはどういう小説のこと?

まず純文学の対義として「大衆小説」がありますが、Wikipediaによると以下のように違いを説明されています。

・純文学(じゅんぶんがく)は、大衆小説に対して「娯楽性」よりも「芸術性」に重きを置いている小説を総称する、日本文学における用語。

「学問のための文章でなく美的形成に重点を置いた文学作品」

ただ、美的形成とか芸術性に重きを置いた小説とはいったいなんだ、と思われた方。
この抽象性を言葉にすることはとても難しいのですが、Yahoo知恵袋で上手く表現されていた方がいらっしゃったので引用させて頂きます。

今までの自分の人生の総決算のような形で、これら根源的言葉から自らの心の内にその言葉の持つ世界を創出します。その自らの世界を表現するために、さまざまなテーマを設定して表現したものが純文学と言えるのではないでしょうか?

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1010935660

芸術とは何かと考えたときに、芸術とは世に発信したい自分の価値観を、現実のものに絵画として反映させることですよね。

要は純文学も同じで、作者が世に発信したい世界や価値観を文章というツールを借りて表現しているのだと思います。その発信したいものは、社会に対する課題であることもあれば、作者本人があこがれている世界であり様々です。

大衆文学の表現が、だれにでも理解しやすい直接的な表現が多いのに対し、純文学といわれる小説には、なんのことを言っているのか分からない抽象的な表現が多いはずです。
なぜ、純文学には良くわからない表現に出くわすか。。それは、一つの事象に対し作者の人生を生きたもの、作者の価値観をもったものにしか分からない表現だからだと思います。

分からないことを分からないなりに理解していく力、人生においても重要です。
そんな想像力と感性を磨いてくれるのが、純文学のもつ力の一つでもあるかもしれません。

では、純文学についての説明が終わったところで、私のおすすめを書いていきます。

おすすめ純文学~時代を経ても色あせない文豪たちからのメッセージ

おすすめ純文学① 斜陽/太宰治

「人間は恋と革命の為に生まれてきた」

戦前貴族として優雅に暮らしてきたかず子が、一家の衰退と成就しない恋の狭間で、生きることの泥臭さを思い知り力強く生きていくストーリーです。

戦後の混乱の中で父親を亡くし、東京の家を引き払った後母親と2人静岡で今までとは打って変わって惨めな生活を始めるシーンから始まります。

貴族の典型と思えるお上品な母親は生活の変化に耐えれずか、静岡に引っ越した直後病気がちになり衰弱していきます。

弟の直治とは再会を果たすも、直治は兵役時代からの薬物中毒から抜け出せずにいました。さらに直治は、戦前の一家が貴族であった時代の友人から一家の衰退ぶりを笑われるが、貴族ではない人間からは貴族扱いで邪険に扱われ、立場に苦しみ自殺をしてしまいます。

一方主人公のかず子は、上原という小説家に恋をするも、上原には妻がおり手紙の返事もなかなかもらえず、成就出来ない恋に苦しみます。

そんな一家が衰退していくと同時にかず子の恋心は大きくなっていき、かず子は生きることの泥臭さに気付きます。
「生きると言う事。生き残ると言う事。それは大変醜くて、血の匂いがする。」「人間は恋と革命の為に生まれてきた」

この思想がかず子の中に芽生えてから、かず子は自分の人生を自分のものとして生き抜こうとする強さを持ち始めます。

貴族という小さなカゴのなかで生きていくこと、妻子持ちの男に恋をしてしまうこと、そんなことよりも自分は恋と革命の為に生まれてきたのだという強い信念は、綺麗ごとだけでは自分の人生を生きていけないという力強いメッセージを伝えてくれます。

おすすめ純文学②美しい星/三島由紀夫

世界が冷戦に揺れ、静かな暗い不安を心の底で持っていた時代に書かれた小説です。

私がこの本を読んだ率直な感想は、「この本がおよそ50年前に書かれたものというのがとても信じがたい」でした。50年前に核兵器がもたらす地球の終焉を想像し、高度経済成長まっただ中の日本で人間の本質を無視した消費主義などの狂気を危惧していたなんて私は心底驚きました。

宇宙人という立場から、日本が立ちはだかる課題を客観的に議論するこの物語は、SFの世界と現実の世界のミックスが絶妙な世界観を実現させています。日本が直面している問題の重さを、SF的な要素が少し和らげてくれ、これが小説であり物語であることを忘れさせません。

想像力を無くし、核により地球を滅ぼす可能性がある人間たちが、唯一救われるとしたら、「気まぐれ」によるものであると主人公は力説します。

気まぐれこそ人間が天から得た美賛で、時折人間が演じる気まぐれには、確かに天の甘美なものの片鱗がうかがわれる。

 本来の目的とは裏腹に、気まぐれにより当初の予定された行動と全く異なる行動をとってしまったことは人間であれば皆あると思います。今の時代に沿って言うならば人間にとって代わると言われている「人工知能」には無い人間らしい部分、人工知能には越えられない人間の美点が「気まぐれ」なのかもしれません。

気まぐれが美しい理由については、ぜひ本を読んで感じてみてください!

また、この小説の主人公は人間のことをこのように表現しています。

彼らは嘘をつきっぱなしについた。彼らは吉凶につけて花を飾った。彼らはよく小鳥を飼った。彼らは約束に時間にしばしば遅れた。そして彼らは良く笑った。

私はこの文章が人間を体現していて、人間が可愛らしく思えるような、人間自身を愛せる文章で私は非常に気に入っています。こんな風に自分の属する生命体を客観視できる三島由紀夫はやっぱり天才だなと思った一文でもあります。

限られた人生のなかで精いっぱい生きていく人間の健気さに感動しつつも、自分がその人間であるという事実も改めて痛感しました。笑

当時の時代の背景を表しつつ、2016年に生きる私たちが抱える課題にも通ずる部分が多くあり、また人間を客観的に語る主人公たちの議論にはぐんぐん引き込まれるおすすめの一冊です。

おすすめ純文学③風立ちぬ/堀辰雄

スタジオジブリの「風立ちぬ」、数年前に宮崎駿監督監修の最後の作品と話題になりましたよね。その映画「風立ちぬ」はいくつかの物語を原作としていますが、主人公の二郎と妻菜穂子の関係性については、この堀辰雄の風立ちぬを原作としているようです。

Le vent se lève, il faut tenter de vivre.(風立ちぬ、いざ生きめやも)

上記の詩から始まる同作は、主人公とその恋人で結核患者の節子の美しく悲しい物語です。また堀辰雄の描く景色の描写は本当に美しい為、悲しい物語にもかかわらず、すーっと消え入るような、音に例えるなら鈴の鐘のような透明感のあるのが特徴です。

今までどんな酷い病状の時もなんともなかったという節子が、近頃気弱になったと主人公に告白します。その理由を節子は以下のような表現で主人公に伝えます。

上ずったような中音で言った「私、なんだか急に生きたくなったのね....」 それから彼女は聞えるか聞えない位の小声で言い足した。「あなたのお蔭で……」

このシーン、なんて健気で切ないのでしょう、、もうたまらないです。この一説、何度読んでも鳥肌が立ちます。

また、主人公は自分と節子の今の生活が美しく、数年後振り返ったときに最も幸福な瞬間だったといえるかもしれないな、と節子に伝えますが、伝えた後に、今この瞬間が美しく幸福だと思えるのは節子の先が長くなく、死が見えているからであり、「数年後、今のことを振り返る」ことを想像してしまったこと自体が矛盾であり、今の美しい時間と幸福を主人公が感じていること自体が自己満足なのではないかと考えます。

死の味がする幸福という言葉が物語にも出てきますが、本当に切なく、始終胸が締め付けられます。

あと、私はこの一説も好きです。

おれ達がこうしてお互いに与えあっているこの幸福、皆がもう行き止まりだと思っているところから始っているようなこの生の愉しさ、そう云った誰も知らないような、おれ達だけのものを、おれはもっと確実なものに、もうすこし形をなしたものに置き換えたいのだ。

これは主人公が二人の生活を小説にすると決意したときに節子に伝える言葉ですが、「皆がもう行き止まりだと思っているところから始っているこの生の愉しさ」そんな行き止まりから細々とでも着実に愛を育むことの儚さと美しさ、、もう半端ないです。。

こんなに美しく悲しい物語、私はほかに知りません。堀辰雄の小説はまるで音楽のようにす~っと入っていくので一瞬で読み終えてしまいますが、改めて今身の回りにある愛を大切にしようと思えました。

世の中に多くある純愛物語に飽きてしまった方、是非風立ちぬを読んでみてください。キスシーンなんて無くても、二人の間にある愛を確実に感じられます。

純文学おすすめまとめ

純文学って、読んでいると本当に心が洗われます。私は美術館めぐりが大好きで、なぜなら芸術作品のコンテクストを自分なりに読むことが好きだからです。

冒頭に述べた点と一部重なってしまいますが、純文学は芸術で、美術鑑賞と同じ効果をもたらしてくれます。

昔の人の言葉づかいや作法にも心奪われますし、物語のコンテクストにあるメッセージを感じることがとても興味深いです。

本当に作者が伝えたかったことと自分が感じたメッセージが同じかどうかわかりませんが、分からないことを分からないなりに追及することって、大切だと思うんです。

次何を読もうか悩んでいる方がいれば、是非純文学を手にとってみてください。
きっとその世界観にはまってしまうはずです。